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不思議な医学書『針聞書』キモカワイイ虫たちの世界


日本の医学の歴史を紐解くと、「病気」とは古代から平安期においては呪詛や魍魎の類の仕業とされ陰陽師などに代表されるシャーマンが医者の務めを担っておりました。

「病気」が現代医学に近い解釈がなされるには江戸時代にオランダから伝わった『ターヘル・アナトミア』を杉田玄白が「解体新書」として訳すまで待たなければなりません。

その杉田玄白が「解体新書」を発刊する約200年前の1568年、織田信長が日本中を相手に戦争していた、まさに戦国時代に書かれた「針聞書」という医学書があります。

「針聞書」(はりききがき)とは当時すでに中国から伝わっていた針灸や漢方薬に関する東洋医学書で、摂津の国(現・大阪府)の住人・茨木元行によって書かれたとあります。

針灸が日本で発展したことを示す資料的に貴重な医学書であるのですが特筆すべきはそのオリジナリティ溢れる内容です。

当時の日本人は病気とは身体の中にいる「虫」によって引き起こされると考えていました。「針聞書」はどの様に針を打てば体内に居る「虫」を退治できるかをまとめた医学書なのですが、その病気を引き起こすという「虫」の想像図がまるで現代のゆるキャラの様にデフォルメされております。

それではキモくてカワイイ虫たちをお楽しみください。


気積 きしゃく

油気の物を好み、魚や鳥も食べる。虎の腹を食べると退治できる。


肝積 かんしゃく

肝臓にいる虫。酸っぱい物が好きで、油くさい物が嫌い。常に怒っているような顔の色をしている。


脾積 ひしゃく

脾臓にいる虫。甘い物が好きで、歌を歌うのも好き。へそのまわりに針を打つとよい。


亀積 かめしゃく

傘のような物をかぶり薬をブロックする。米を食べる。野豆を食べると退治できる。


コセウ こせう

物を言う虫。傘をかぶり薬を受けない。胴は蛇のようで、ひげは白くて長い。甘酒が好き。


肺積 はいしゃく

鼻は肺の穴である。善悪の臭いが嫌いで、生臭い香りが好き。辛いものが好き。この虫がいると常に悲しい気持ちになる。針は柔らかく浅く打つとよい。


脾ノ聚 ひのしゅ

脾臓にいる虫で、岩のような姿をしている。この虫が起こる時は盤石(ばんじゃく)の岩の上に落ちるような感じがする。針の打ち方は口伝されている。


脾臓の虫 ひぞうのむし

脾臓にいる虫。

この虫が体内にいると目まいを起こして頭を打つ。木香(もっこう)・大黄(だいおう)で退治できる。


蟯虫 ぎょうちゅう

庚申の夜に体より出て閻魔大王にその人の悪事を告げる。

これら以外に実に60点以上の虫たちが想像力逞しく紹介されている「針聞書」。

病気の元凶となる「虫」たちがこれだけ多く描かれている資料は日本でもほとんど確認されておらず、当時の日本の医学に対する考え方を知る貴重な資料として、

九州国立博物館に所蔵、常設展示されており、ぬいぐるみや手拭いなどのグッズ展開も人気だそうです。


進士 素丸

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