鉄と星の物語「たたらと羽衣伝説」

2017/09/02

 

宮崎駿監督のアニメ『もののけ姫』には「たたら場」が、物語のカギを握る重要な場所として登場します。たたら場とは砂鉄から鉄を取りだす作業を行う場所で、いわば昔の製鉄所です。
たたら場は古代より日本各地に存在し、長く日本の鉄需要を賄ってきましたが、明治になって西洋式の近代的製鉄法に押され、徐々に姿を消していきます。現存するのは島根県雲南市吉田町にある「菅谷(すがや)たたら」のみで、『もののけ姫』に登場するたたら場のモデルも、この菅谷たたらと言われています。

 

一般に女性は製鉄作業に従事しない。彼らが祀る金屋子神(かなやごかみ)が女性神で嫉妬深く、たたら場に女性が入ると祟りがあると言われたからです。

『もののけ姫』で宮崎駿がタブーとされる女性を製鉄作業に従事させたのは、祟りを恐れないエボシ御前の近代的な精神をセリフで説明するのではなく一目で表現してみせた秀逸な演出なのです。

 

「ヤマタノオロチ伝説とたたら製鉄」

 

「たたら場」で使用される砂鉄は、含まれる不純物が少ないほど良質とされました。上質な砂鉄は中国山地の中でも、特に出雲地方でのみ採れました。

 

出雲と言えば国譲りの物語に代表される日本神話に多く登場する重要な地域ですが、スサノオノミコトがヤマタノオロチを討伐したのも出雲になります。

ヤマタノオロチ伝説は日本書紀や古事記において、「目はホオズキのように真っ赤でその腹は血にただれ、頭が八つ」「尾を割り裂いて見ると、中にひとふりの剣があった。「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」である。スサノオノミコトはこの剣をアマテラスオオミカミに献上する。」とあります。

 

ヤマタノオロチは出雲を流れる斐伊川流域とその支流を表すとする説があり、斐伊川流域は古来より製鉄文化の盛んな地域でした。ホオズキのように赤い目はタタラ製鉄に関わる人たちの炎を凝視する目を現し、血にただれた腹の記述は製鉄で燃え盛る炉のなかの溶けた鉄を現している。すなわち古代出雲の製鉄を示しているとする説です。

 

スサノオノミコトとは当時の中央集権国家であったヤマト政権のことであり、スサノオが草薙剣をアマテラスに捧げる行為は、出雲のヤマト政権への屈伏を意味し、しかもそれが今日に到るまで皇室の三種の神器の一つなっていることからも、当時の日本で最新テクノロジーであった出雲たたらの製鉄技術を征するということは日本を征することに繋がったことが伺えます。

その証拠にヤマト政権はスサノオ、オオクニヌシ、ヤマトタケルと三度も出雲を攻めています。

 

ヤマトタケルもまたヤマト政権を象徴する日本神話の登場人物。西の熊襲(くまそ)、出雲、それから東の蝦夷(えみし)を征伐した英雄として描かれていますが、このヤマトタケルが征服した地には2つの共通点がありました。一つは「鉄の産地であったこと」もう一つは「羽衣伝説が語り継がれている」ことです。

 

「羽衣伝説とそのルーツ」

 

羽衣伝説とは、天から舞い下りた天女が松の枝にかけていた羽衣を通りすがりの漁師が隠したので、天女はやむなくその漁師と結婚するが、のちに羽衣を取り戻して天に帰っていくという話。

この羽衣伝説に似た寓話は世界中に見られるのですが、元々は中央アジアで広まっていた「白鳥処女説話」が中国や朝鮮から日本に伝わり形を変えて定着していったようです。

 

中央アジアに伝わる「白鳥処女説話」は、

森の泉に七羽の白鳥が舞い降り、そこで羽衣を脱ぎ捨てると美しい娘たちに変身し、水浴びをはじめました。 それを森の中から見ていた若い猟師は、娘たちの美しさに惹かれ一枚の羽衣を隠してしまいます。 六人の娘は再び白鳥に化身して天空に飛び去り、裸で取り残された娘は仕方なく猟師と結婚して地上にとどまることになりました。というもの。

 

さらに、この白鳥伝説のそもそもの起源は古代ギリシャのオリオンとプレアデスの神話だという。

「プレアデスとは美しい七人の姉妹の名だった。いつも森の中で遊んでいたが、ある日猟師のオリオンに襲われた。シリウスという犬を連れて迫るオリオンにプレアデス七姉妹は逃げ惑い神々に助けを求めた。神々は姉妹を鳥に変えて空に逃がしてやった。そしてそのまま天に昇らせて七つの星にしたのだという。その後、七つの星は六つの星になった。それは姉妹の一人が人間に恋して姿を隠したとも、あるいは流れ星となって飛び去ったためとも言われる。」

 

プレアデスとはプレアデス星団のことで日本では昴(すばる)星団と言われています。古くは枕草子にもその記述があり、肉眼で六つの星が見えることから「六連星(むつらぼし)」と呼ばれれていました。

プレアデスと言えば六つの星なのですが、奇妙なことに古代では七つの星が見えていたらしいのです。

アッシリア帝国の粘土板にははっきりと七つの星が刻まれており、古代中国でも「昴宿七星(ぼうしゅくしちせい)」と呼ばれていたのです。

何故、一つの星が忽然と消え去ったのだろうか。

星の寿命が終わり、超新星爆発で消滅してしまったとする説が有力ですが、いずれにしても星の一つが失われるのを目撃した古代の人々によって生み出されたのがプレアデスの神話でした。

 

「星から鉄を生み出した民族」

 

このプレアデス神話から白鳥伝説を作り出したのがヒッタイトという民族です。

ヒッタイトといえば、青銅器しか持たなかった人類に最初に鉄器文明をもたらした民族。

彼らが作った最初の鉄剣は隕鉄が原料でした。隕鉄とはすなわち、宇宙からやって来た隕石に含まれる鉄です。

空から降ってきた隕石を目撃したヒッタイトの人々は、そこに流れ星となって消えたプレアデスの星の一つを連想したのかもしれません。

 

やがてヒッタイトの民族も他の民族に滅ぼされ世界中に散らばっていきます。

ヒッタイト人は世界の鉄の産地を求めて移動していくのですが、その歩んだ道のりは不思議なことに白鳥の生息地と一致しているのです。

鉄鉱石や砂鉄は磁性を帯びていることが多い。白鳥などの渡り鳥は一説によると、地磁気から方角を知るという。鉄あるところに白鳥あり…とすれば、白鳥の姿を目印として追い求めた人々がいたかもしれない。

そして彼らヒッタイト人は隕鉄を授けてくれたプレアデスの神話から、鉄の産地へと誘ってくれる白鳥伝説へと昇華させていったのではないだろうか。

やがてヒッタイト人はタタール人と呼称を変え、製鉄技術と伝説を伝えながら白鳥を追って世界を旅していきます。

 

プレアデス星団の超新星爆発から始まった神話は白鳥の翼に乗って海を渡り、やがて羽衣伝説となり、タタール人の伝えた製鉄方法は「たたら製鉄」と呼ばれるようになったのではないだろうか。

 

進士 素丸

 

 

たたら製鉄とタタールとの関係研究へ タタルスタンから視察団

http://www.sankei.com/region/news/150123/rgn1501230056-n1.html

 

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